風義ブログBLOG

2019.04.25

労い。

郡山市・西田の家、上棟式をおこないました。竣工祝いでもなく、着工祝いでもなく、建築の施工過程でおこなわれる上棟式の儀礼が存続している要因や存在意義について考察した修論がありましたのでみなさんにご紹介したいと思います。

 

まず、上棟式(以下、式と訳す)とは、地鎮祭、竣工祭、屋根葺き祝いなどの建築儀礼のひとつである。また、儀式により主宰者が変化することも特徴のひとつである。

 

式の起源は縄文時代からおこなわれていたとも伝えられており、形式化されたのは平安時代のころである。江戸時代には竣工間際に式が開催されていた文献が残されているが形式に変化はみられない。しかし、大正時代を転換に略式された式が開催されれた。なかでも祭壇のつくり方などにその変化がうかがえる。近代では、棟梁に神秘的な力があるとすることで式のご利益などについても信じられてきた。こうした式に信仰心がともなっていたのは昭和初期ごろまでである。式では、梁材などが組み上げられたことを祝い、その後建築に携わった人びとが互いを労い直会(なおらい)がおこなわれた。

 

こうした式への変容のなかで最も影響を受けた主要因が、高度経済成長期における持家の大衆化である。つまり、式開催の余裕がない世帯が増加したのだ。これにより大幅な簡略化が進んだ。

 

現在、式に信仰心を持って取り組んでいる関係者は多くはない。また、本義の式の形式を開催できる施主は限られている。このため、昨今では職方への感謝と親族への報告や感謝の意味合いが強く、神への感謝や祈願といった側面は失われている。住まい手は施工会社の示した形式をそのままおこなうことで満足感を得て、つくり手は略式化に理解しつつ、施工プロセスに参加している現状がある。ただし、式の有無により仕事の質に影響が出ることはない。

 

上述べのように、式が時代を経るごとに形態や意味合いを変えながらも存続し、変化しながらも姿を消すことなく今日まで残ったものは職方への感謝の場である。

 

引用文献 豊田彩乃 2012. 「上棟式の意味と現状、その時代変遷〜建築儀式の存在意義とは〜」『法政大学大学院紀要 デザイン工学研究科編』1:1-3

 

 

 

令和時代の上棟式、どこまで簡素化簡易化されるのかなと考えながらブログを書いてみました。

 

 

 

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